塾なし高校受験〜うちの田舎メソッド〜

2025年高校受験予定の中2息子、ポン助は中学受験残念組。進学塾の無い田舎から1校のみの挑戦。しかしあと数問程度力及ばず、地元の公立中に進んだ。中学受験の内容も知らずに、事ある毎にネタにして馬鹿にする奴も居る。でも「楽しかった。僕は挑戦する事を止めない。」そう言い切った。常に仲間と明るく楽しく、全力で駆け抜ける中学生男子の日常。

負の感情の矛先

「お母さん大変だ!僕のペンケースが

学校で無くなった!せっかく集めた

お気に入りのペン沢山あるのにー!」

 

「えーっ!!家にあるかも知れないから

机の周りに落ちて無いか探してごらん?」

 

「探したよ!でも今朝は確かに学校で

カバンから出したんだ。でも1時間目が

始まる時に無くなってた。だから学校だよ。

消えたのは、僕がカバンと上着を掛けに

席を離れた時の短い間なんだ。」

 

「その時間に教室に居たのは?」

 

「バス組と数人。全員覚えてる。

遅くに登校した子も居たから

かなりザワついてた。」

 

その日はJアラート発動日。

朝の学校は騒然としていたらしい。

登校時間に発動され

1度自宅に戻った子も居たので

先生も対応に追われ

授業も少し遅れて開始したとの事。

 

そして

その混乱に乗じて

お気に入りの文房具の詰まった

ポン助のペンケースが消えた。

席の周りにも

自分の行動範囲にも無かったらしい。

 

確かに朝一番に

カバンから出したはずの

ペンケースが消えたので

慌てたらしいが

もしかしたら

自宅に忘れたのかも知れないと

思い直して

周りの友達から筆記用具を借り

1日授業を受けた。

 

そして部活を終えて帰宅後

やはりペンケースは

何処にも見当たらず

私に訴えて来たのだ。

一緒に探しても見付からず

私はポン助に

もう1度学校に探しに行こうと言い

すでに夕方だったので

入れてもらえるか学校に連絡した。

 

幸いまだ担任の先生が居て

直ぐに事情を説明し

一緒に探して下さるとの事。

私とポン助は

急いで学校に向かった。

 

先生も

ポン助のペンケースが消えて

周りの友達から借りていたのを

知っていたらしい。

 

授業で移動した教室や

校内の隅々まで

一緒に探して下さった。

ポン助と先生が校内を回っている間

私は学校の周りを探した。

ゴミステーションや

体育館周り

校庭の庭木の根本など

そして

泥にまみれた

解けかけの雪山に 

埋められたりしていないか等

あちこち探し回った。

 

中学受験模試で

初めて上位になった時に

ねだられて購入したオレンズネロ

書きやすいと気に入り

科目別に使い分けて

何色も持っているクルトガアドバンス。

小学校入学時から変わらない

よく消える消しゴムに

友達と色違いのシャープペンシル

誕生日プレゼントに貰った

使いやすい付箋。

家族でお揃いの

書きやすい4色ボールペン。

憧れの大学のロゴが入った

シャープペンシル等。

 

機能性と効率重視で選んだ

ポン助の文房具。

モチベーションアップにも

1役買ってくれている。

 

どんなに勉強嫌いな子でも

学生にとってペンケースは

まさに「相棒」と言えるだろう。

毎日の生活で

1番無くなったら困る物。

 

正直私は

「またやられたか…」

と思っていた。

 

学校でのポン助は

友達も多く

イジメられる様なタイプでは無い。

賑やかで陽キャなので

いつも周りを爆笑の渦に巻き込んでは

楽しく過ごしている。

 

しかし

その裏側では

中学入学当初から

ポン助の勉強の必需品が

よく無くなっていた。

1番多かったのは

小テストや単元テストの

練習プリント。

これらは決まって

学校に置いてある

個別の学習BOXから消えていた。

先生が

「このプリントから出るからね」

と言った物が

ポン助が授業で使う時や

テスト勉強の為に持ち帰る時に

高頻度で消えている。

 

「僕に満点取らせたくない奴の仕業だよ。

配られたら直ぐ全部頭に入れてあるから

隠されても問題ナシ♪好きなだけやればいい。

先生にも犯人探しはしなくて良いって言った。

だってやった奴が1番ビビってるはず。

でもやっぱムカつくけどね〜。」

 

そう言って笑いながら

ポン助はいつも流して来た。

 

この学習BOXは

出席番号順に並んで居るらしく

鍵等は無いので

他人のBOXを見る事も出来るらしい。

しかし

人数が少ないので

自分のBOXから離れた

他人のBOXを物色していたら

直ぐに怪しまれるので

誰かが意図的にやっているとしたら

同学年に絞られる。

 

ポン助がだらしないだけだろうと

言われたらそれまでだが

整理整頓はかなり得意で

小学校入学後から

私や主人が

ポン助の学習机を

片付けた事は一度も無い。

ファイリングも得意で

科目別にしっかり分類している。

机が汚すぎたり

片付けなさいと叱った事も

勿論無い。

 

ただ

授業で使用するプリントを

紛失してしまい

その科目の先生に知れたら

評定に大きく影響するだろう。

ポン助の印象も悪くなるだろう。

そうすれば

小テストや単元テストが満点でも

定期テスト

評定5の点数を取っても

4に下げられるかも知れない。

 

ノートの色分けや

書き方を重視させる授業で

ペンケースを忘れたら

授業に対する熱意が足りないと

学習意欲などの評価を

下げられるかも知れない。

 

ポン助が

テストで取る点数を下げられないなら

その他の評価が下がる様に仕向けて

叩き落としてやろうと

誰かが悪意を持って

時折不定期に

嫌がらせをしているのがわかる。

 

そしてそれが実行出来るのは

群れずに単独行動が多く

人目に付かない時間に

教室やBOXに行ける子だろう。

皆と違う時間帯で

部活動や委員の活動が多く

正当な理由があって

一人で動ける子でなければ

必ず誰かに見られたり

止められてしまう。

 

評定の影響に至るまで

達観して先を読める

頭の回転の速い子にしか出来ない芸当だ。

そしてそういう子は

バレそうな時に疑いを他に向ける話術や

バレた時の言い訳までも

全て準備して実行しているだろう。

そしてペンケースが見つかるまで

ポン助や先生の様子を伺い

ビクビクしながら

神経質に過ごすだろう。

 

 

ペンケースを探し始めて

1時間くらいだったろうか…

すっかり日も暮れた頃

担任の先生とポン助が

校舎から出て来た。

 

「お母さん、あったよー!!」

「良かったね。何処にあったの?」

「それがですね…明らかにおかしな場所に

隠されていまして…」

 

担任の先生が不穏な表情で言った。

 

先生とポン助が言うには

生徒は誰も使用しない所で

先生ですら滅多に使用しない所。

落として見えなくなったり

隙間に入ってしまったりする様な

そんな場所では無く

明らかに意図的に

誰かが隠したであろう場所で

ポン助のペンケースは

発見されたとの事だった。

 

先生とも色々と話して

丁重にお礼を言って帰宅。

 

とりあえず見つかったので

犯人探しに執着するのは

やめようねと話した。

続く様なら

指紋採取キットを買おうかと言い

ポン助と笑っていた。

 

可能性は限りなく低いが

幼稚な悪ふざけで

ポン助がいつ気付くか

仲間達が数人でやっていたとしたら

笑ってネタにしようと話した。

 

そしてもし

長期に渡る

今までの嫌がらせと同じ人物が

上記の様な悪意を持って

プリント類からペンケースに

エスカレートしたならば

これから更に

無くしたら困る様な

ポン助の学習に必要な物が

消える可能性があるので

細心の注意を払うようにと話した。

 

先生には

プリント類が頻繁に消え始めた頃から

全て話しているので

常に気に掛けて下さっている。

 

主人にも報告すると

「中学生にもなって幼稚ですね。

ただの悪ふざけでは無いでしょう。

視野が狭くプライドも高く

かと言って面と向かっては

何も言えない自己肯定感の低い子が

そうする事でしか自尊心を満たせなくて

リスクを顧見ずにやるのでしょう。

自分の子がそんな事をしていると

親が知ったらショックでしょうね。」

と言っていた。

 

穏やかで優しい主人は

ポン助を怒鳴った事も叩いた事も無い。

しかし微笑みながら核心を突く。

 

幼いポン助を叱る時は

どうしていけなかったのか

いつも冷静に淡々と話して来た。

それだけでもポン助は

主人に叱られるのが1番怖かった。

 

「親が子供を怒鳴ったり殴ったり

暴力や恐怖で支配するのは嫌いです。

恐怖と悲しみと嫌われたくない一心で

子供は嘘をついたり人のせいにします。

元来素直な性格も歪んでしまいます。

だから僕は理解してくれるまで

とことん向き合って話します。」

私もその考えに賛同した。

 

しかし世の中には

そうではない家庭も沢山ある。

暴力的な体罰は無くとも

「こうあるべき

そうあるべき

常に優等生で居なさい

常にクラスの代表で居なさい

どうしてこんな点数しか取れないの

どうして〇〇みたいに出来ないの」

等と

結果しか見ずに

子供に精神的な重圧を

長年かけ続けて

歪んで来た子供の心に

気付かない親も居る。

そして行き場の無い感情を

クラスメイトや先生に対して

嫌味を言ったり揚げ足を取ったりして

学校で発散する子も居る。

上手く発散出来ずに

特定の誰かを攻撃する事で

自分を満たす事もある。

過去には

その負の感情が爆発して

妬みの対象となった相手を

いきなり切り付けて

傷害事件から殺人事件に発展した

恐ろしいニュースも記憶にある。

 

恐らく今回また

ポン助がその標的にされたのだろう。

 

前日にも小さなトラブルがあり

故意にやったわけでは無く

偶然の出来事だった。

しかし明らかにポン助が悪かったので

何度も謝罪したが

文句ばかりで許して貰えなかったと

しまいには

「話す時間が勿体無い」

とまで言われたと

帰宅後言っていた相手も居るので

気を付けなさいよと

言っていたばかりだった。

 

私も主人も

大方の予想はついている。

多感な時期だけに

もう大きなトラブルは避けたいので

学校と連携しながら

見守って行こうと思う。

 

ポン助は

ペンケースの見つかった場所を

口の固い限られた友達にしか

言っていないとの事。

 

「僕が教えていないのに

その場所を知っていた奴が

ペンケースを隠した犯人だよ。

ま、そのうちわかるでしょ♪

真実はいつもひと〜つ!!」

 

名台詞をポーズ付きで決めて

気分はまるで名探偵コナン

笑いながら机に向かっていた。

 

いちいち気にしているのは

それこそ「時間が勿体無い」らしい。

 

それでいい。

 

悪質な嫌がらせまでも

全部笑い飛ばして

強く折れない図太い心で

前だけ見据えて進んで行こう。